商談をしていれば「お客様が悩んでて中々契約してくれない」なんてこと良くありますよね。でも営業は契約してもらわないといけません。
また、難しい相談を受けることや交渉事の場面もたくさんありますよね。営業の皆さんは出来ることなら自分の思うとおりに進めたいはず。
この記事はこんな人におすすめ
- クロージングの勝率上げたい!
- 交渉事が苦手で中々思うとおりの返事がもらえない
- 自分の勝ちパターンを持ちたい
この記事を読めば、営業シーンで使える認知的不協和を意識しながら交渉事などを進められる営業術を知ることが出来ます。
認知的不協和ってなぁに?
心理学で認知的不協和という言葉があります。
認知的不協和<例1>
- 外は新型コロナだから出かけないほうが良い
- 外に出かける
この2つのことって相反してますよね。
これを認知的不協和と言います。
「出かけないほうが良い(考え)」と「出かける(行動)」というのは、相反する考えと行動になり、人はこの状態を不快に感じ解決しようとします。
この場合、出かけたい本人の心理として、本当は出かけないほうが良いのに、出かけるという行為を正当化するための理由を考え、解決しようとするわけです。
例えば、新型コロナのせいでしばらく美容室に行けてない人が、そろそろ髪を切りたいなぁ、と考えてるシーンを想像してみてください。
「出かけないほうが良い」を否定し、「出かける」を正当化する理由として、
髪が伸びてたままでは暑くて仕事が捗らないから早くスッキリしたほうが良い
ほとんど人にも会わないだろう
逆のパターンもありますよね。
絶対に新型コロナに感染したくないので美容室はしばらく行かないと決心してたが、家族から汚らしいからそろそろ髪を切りに行って来たら?と強く勧められるシーンを想像すると良いかも知れません。(これ、2020年夏のワタクシでございます…。)
その場合、
「出かけないほうが良い」を正当化し、「出かける」を否定する理由として、
家族を感染させる原因になったら大変だ
髪は伸びても我慢すれば大丈夫だ
空いてる時間でも誰かとの接触は避けられない
こういうことって日常の中に良くありますよね?
認知的不協和<例2>
今度はこんなケースでどうでしょう。
- ベンツのGクラスを買う
- 貯金はない
最近よく見かけるGクラスはとても高い車です。貯金がなくてはとてもじゃないけど買えない。
これも相反する内容で、不協和の状態といえますね。
買いたい本人はこのように正当化するのではないでしょうか。
売るときに高く売れる
事故にも強い車体だから命を守ると思ったら安いものだ
良い車に乗ればモチベーションが上がって仕事を頑張れる
こういったケースでは、買った後にも買ったという行為を正当化します。
例えば、友人から「高かったんじゃないの?」と言われれば上記のような理由を並べて自分を正当化し買うメリットを主張するはずです。
ディーラーからしてみたら、買ってくれたその人が一番の営業かも知れませんね。
営業シーンで実践
ここでは、私が営業をしていて遭遇したケースや、実際に起こりそうなケースを例に説明していきます。似たような場面は皆さんの営業シーンにも起こると思いますので、是非アレンジしながら実践してみてください。
お客様の不協和を解消する
わかりやすい認知的不協和の場面から順にいきます。
お客様の正当化の理由探し
当社(A社)の提案内容はお客様の要求にマッチしてるが予算より高い、一方で、競合他社(B社)の提案内容はイマイチだけど安い、こんな状況ありますよね。
- A社提案は採用に値する提案内容だ
- 予算が足りない
こんな時、当社の営業はどのようにこの不協和を解消してあげることで、当社提案を採用してくれるでしょうか。
- 予算ありきとは思いますが、B社の提案で失敗して買いなおすことを想定したら、今回多少のオーバーを飲むほうが良いのでは?
- 総額は予算オーバーになりますが、分割して一部来期支払いにすれば、上司の○○さんは納得してくれますか?
- 予算より高いですが、機能不足では使う他の社員から不満が出ませんか?
多少、直接的に書いていますが、主旨は伝わりますでしょうか。
お客様としては、良いものを予算内で買いたいわけですが、良いものが予算を超えるのであれば、A社の営業としては、予算オーバーしていることの正当な理由を見つけてあげることが大事です。
上記のとおり吹き出しで表現をしていますが、言葉で伝えるだけが大事なわけではありません。
上記例で言えば、買い直しした際の総額を試算した表を作ったり、本来は分割払いが出来なくても自社内で相談して特例の支払い条件を認めてもらえるよう奔走したり、お客様が他の社員の不満が気になるのであればアンケートを作って意見収集の手伝いをしたり、実際に形になる形で正当化の理由を作ってあげることが出来ればより後押しになるでしょう。
また、実際に当社を採用してもらった後に、高品質のサポートをすることも忘れないようにしましょう。当社を採用してもらったのは良かったが、評判が良くなく、判断したお客様の立場が悪くなるようなことは避けなければいけませんよね。
言わないほうが良いこともある
取り引きのない会社に訪問した際にこんなシーンがあると思います。
何度もすみませんね!でも今はB社さんとお付き合いがあるので結構ですよ。
話を聞いて頂くだけで結構ですので少しだけお時間いただけませんか。
認知的不協和を踏まえて考えると、この状況のお客様の中にはこんな不協和が発生してると考えられませんか?
- 何度も来てもらってるのにいつも断ってて申し訳ない
- 断る
といったときに、新たな取り引きを始める気がないお客様は、断ることの正当性を探します。
でも、営業のコメントに「話を聞いて頂くだけで結構」とありますよね。
つまり、お客様としては「断るばっかりじゃなく話を聞いてあげた、希望を叶えてあげた」だから断ってもOKよね。という正当性が見つかったということになります。
営業としては、極力、相手が断るための正当性を自ら出すことはしないほうがよいでしょう。
反対に、断られないための理由付け、断ったら勿体ないと思わせる話を常にしながら次のステップに進めることが望ましいです。
初回訪問時だけではなく、商談のどのフェーズでも有効ですので意識してみてください。
- B社さんにはないサービスをはじめたので紹介させてもらえますか?
- 当社は業界で有名な○○さんと定期的に意見交換してまして、新しい情報が入りやすいです。
- 昨日のセミナーの内容を纏めたのですが少しお時間ください。
- 当社はこういったサービスがあって付加価値としてご利用いただけます。
- 今、期間限定でお得なご紹介をしています。
話を聞いてもらうこと、採用してもらうことを正当化してもらうためにも、今この営業を切ったら勿体ない、ということを分かりやすく伝えていくことが大事です。
お客様の潜在的な不協和を探して対策する
- あのスイスイ進むと評判の電動自転車が欲しい
- 買ってない
この時のお客様の潜在的な不協和はなんでしょうか?
あんまりあの電動自転車に乗ってる人を見かけないし、実は性能が良くないんだな。
欲しいけど買うまでに至ってない人は、自分の中で仮説を立ててまだ買わないことを正当化している可能性があります。
そんな時に売る側が潜在的な不協和を把握することで、買わないことの正当化を払しょくすることが出来ます。
例えば、実際に電動自転車に乗っている人を紹介して評判を伝えてもらう、とか、試乗会で乗ってもらい性能を確かめてもらう、等といったことが対策として考えられるのではないでしょうか。
マーケティング調査、アンケート、ヒアリングなどでダイレクトな意見が聞ければ、より具体的で実態に則した手立てが打てるでしょう。
視覚で訴える認知的不協和
キャッチコピー
人は、自分の認知的不協和の状況だけでなく、自分の周りで起きている認知的不協和に対しても不快感を示し、解消したいという思いが働きます。
代表的なのは、本のタイトルや、映画のキャッチコピー、電車の広告等にも、人の認知的不協和を利用したものが多く用いられています。
「売らずに売れ!」
「バカでもハーバード大学に合格できる勉強法」
「五つ子ちゃんママの悠々時間」
実在する本やキャッチコピーかはわかりませんが、それぞれ相反することを訴えていて、これを見た人は、正当化するために答えを知りたくなります。本であれば読みたくなる、というわけです。
営業活動においてはバラマキ用のチラシや、提案書でポイントとなるページにこういった要素を入れておくことで、選択肢から外させないようにすることが可能です。
またこの記事のタイトル「必死に売らない!業績好調トップセールスの営業術」にも不協和を感じていただけていたらうれしいです!
ネットショッピング
楽天トラベルでこんな表示があります。
画像右のほうに「残り1部屋です!」と書いてあります。
似たようなもの見たことありますよね。
おそらく買う前の人は、「このホテルの評判ってどうなんだろう?口コミは良さそうだけど信用していいのかな?他にも良いプランがあるかも知れないからもっとじっくり探したほうが良いかな。」と考えるでしょう。
楽天トラベルはそれを想定して、「いくつもある部屋があと1部屋ってことはやっぱり評判が良いホテルなんだな。きっとリピーターの人もいるだろうから確かなプランだろう。早くしないと無くなっちゃう」と、このプランを選択したことを正当化するためにこの表示をしています。
また、買ったあとも同様に、「残り1部屋ってことは良いホテルなんだ。安心したぁ」と買ったことを正当化しているはずです。
まとめ
このようにいくつかの例を用いて認知的不協和を説明してきました。
もちろん無意識のうちに使っている人も多いと思いますが、是非、様々な場面で意識して使ってみてください。
認知的不協和の理解によって、皆さんの営業活動が順調に進めばうれしいです。