営業を始めたばかりのころ、上司や先輩との同行はとても苦手で、できることなら避けてとおりたいと思っていたタチでした。
皆さんは営業同行をしていますか?
この記事はこんな人におすすめ
- 営業同行が苦手だけど売れるようになりたい部下の人
- 部下を成長させたい上司の人
- 効果的な営業同行について知りたい人
この記事では、部下の立場の人にも上司の立場の人にも通じる、営業同行の効果的なやり方を説明したいと思います。
営業同行とは?
まず最初に営業同行とは?です。
私が新人の頃は、新人研修が終わると翌日から現場に放り投げられ、やりながら自分の営業の仕方をみつけなさい、というのが基本のやり方だったように思います。
もちろんその中でも、世話役を担ってくれた先輩が定期的に一緒にお客様先に訪問をしてくれたり、先輩のアポイントに同席させてもらったり、時には上司が思い付きで「今日は同行するぞ」と言い出して一日中行動を共にするなんて日もありました。
このように、特に経験の浅い営業について一緒に営業回りをし、時にはサポートをしたり、時には訪問後にアドバイスをしてくれたり、ということを営業同行と呼びますね。
営業が、専門や有識者、技術者を連れてお客様先に訪問することも同行と言いますが、この記事では、経験値が浅い営業が上司や先輩学んでスキルアップにつなげるためのポイントにフォーカスしたいと思います。
営業同行の目的
下記それぞれの立場で整理してみます。
上司・先輩の目線
上司や先輩社員が組織やチームを持っている立場の人であれば、数字の達成責任があると思います。
スーパースター一人いれば数字が作れてしまう、というのは理想形の一つではありますが、昨今では営業の方法についても特定の人に片寄せしたり俗人化するのではなく、営業社員誰もが均一な結果が残せるように仕組み化された営業手法が求められています。
また特定の人に頼る営業組織では、その人がコケてしまった際にバックアップが居なくなるとマイナスインパクトが出てしまいますし、退職をしてしまえば事業継続すら儘ならなくなってしまうというリスクも考えなければいけません。
そういったことを考えれば、できない営業を作らない、営業レベルを底上げして平準化するという考えは、数字を持っている管理職の人たちには無視できない考え方になってきています。
厳密にいえば、部下や若手の成長がKPIになっていないという営業管理職の人も多いと思いますが、中期的に見れば数字を作ってくる営業社員の成長はKPIは関係なしに期待せずにはいられないでしょう。
営業育成のために、世の中には様々な優れたメソッドが存在しますが、個人的にはどんな講習や研修よりも、効果的で即効性がありリーズナブルな方法が同行だと思っています。営業同行の効果を同じように見ている人も多いのではないでしょうか。
部下・若手の目線
前述のとおり、私は最初のころ同行してもらうのが苦手でした。
自分の物差し以外で評価されるのはやはり窮屈でしたし、気疲れもしますよね。
私が新卒で入社した会社は、不定期で月に何度か先輩社員と同行する機会があり、自己流の営業手法によくダメ出しをされたものです。
でも、ここで認識すべきはそれ以上に得られるものが多いということです。
前述のとおり、振り返れれば同行の中で指摘されたことは未だに覚えていたり、難攻不落と言われたお客様を一緒に開拓してくれたことなど、私自身の営業の分岐点になった場面を経験しています。
また現在の私の立場で部下と同行をしても、大変僭越ながら学びを与えられていると感じます。
「No pain, No gain」と言うと若干パワハラチックですが、つらい思いをしてもやった方が良いと思うのは、上司や先輩営業との同行です。
希望して同行の機会をもらえるのであれば是非手を挙げて同行してもらいましょう。
そのためにも、この記事では効果的なやり方を整理していきますね。
営業同行の目的
これまで営業同行の育成的な観点で説明してきましたしこのあとも同様に進めますが、いくら育成とはいえ社内のロープレとは違い、同行する先はリアルなお客様先です。
つまり一件一件が本番の訪問であることには違いありません。
よって目的の優先順位は下記の順と考えるのが良いのではないかと考えます。
- 商談の進捗(営業のそもそもの目的)
- スキルアップ(二次的なもの)
育成用の教材から学ぶのではなくて、リアルな現場から学びを得る、という前提でご理解ください。
営業同行の手順
それでは順番に説明していきます。
準備
営業同行をより効果的なものにするためには準備が大事です。
別の記事でも触れましたが、営業が成果を上げるためには計画と修正が大事です。
一回の訪問にも準備が必要で、訪問後には修正箇所を分析する必要があります。
計画が無ければ、想定通りなのか、想定外なのか、良いのか、悪いのかがわかりません。
どんな準備が必要か、です。
- 訪問先のリストアップ
- 訪問の目的(情報提供、ネタ探し、提案、クロージング等)
- 訪問のゴール
- 上記1.~4.の事前レビュー
上司や先輩側の準備(仕掛け)としては、あらかじめ同行する日を伝えておき、その日に向けて行先作りをするように指示しておくのが良いでしょう。
訪問先のリストアップ
営業が同行してもらいたい先をリストアップします。
営業の主観で、同行をしてもらうことでプラスになりそうな先をリストアップしましょう。
商談を進捗させたい先とか、難しいお客様で自分だけでは突破できない先とか、上司を紹介して箔をつけたい先とか、クロージングで最終値を提示する場面とか、タイミングによっていろいろな状況のお客様がいると思いますので、その時の状況に合わせてピックアップします。
新規開拓が得意な上司や先輩との同行であれば、コンタクトのない先に飛び込み営業で同行してもらうのも有りかも知れませんが、まずは明確な目的を持てそうな先が良いです。
訪問の目的(情報提供、ネタ探し、提案、クロージング等)
リストアップした訪問の一件一件に対して、訪問の目的を明確にします。
リストアップした際にイメージしていた目的を具体的に明記します。後で同行者とともにレビューをすることを想定して、必要となる基礎情報もまとめておきましょう。
訪問のゴール
目的とニアリーイコールですが、より具体的に訪問後にどういう状況になっているかのゴールの絵(ビジョン)を明らかにします。
目的の更に先にゴールがあるとイメージするのが良いでしょう。
情報提供が目的であれば、具体的に情報提供をした後にどうなっているかがゴールです。
ネタ探しであれば次回訪問の宿題をもらうとか、プレゼンス向上であれば次回製品紹介のアポがゴールであったり、クロージングであれば契約締結ですね。
ゴール設定することで、その訪問が勢いだけだったり、行き当たりばったりだったり、運を天に任せることにはならず、どうすればそのゴールにたどり着くか、それまでに得られている情報をベースに仮説を立てたり、サジェスチョンを考えたり、提案内容をまとめたり、キーンな提案を準備したり、といった感じで必然的に準備するきっかけになります。
上記1.~4.の事前レビュー
ここまでの準備が終わったら、一通りのシナリオを共有するために事前レビューをしましょう。一件一件ガチガチにしてしまうと負荷が増えますので、ポイントに絞って訪問をするのが良いでしょう。
上司や先輩営業は、部下からの事実に基づく報告によって当日アドリブで上手くコメントしたり立ち回りをしてくれますので、事前レビューは大事です。
この訪問ではこんなことをコメントしてもらえると助かります、といった内容も非常に大事です。
レビューによって不足していることや違和感があれば解消して、お互いがゴールのビジョンを共有できれば準備完了です。
訪問に向けた準備については下記の記事でも触れていますのでご一読ください。
営業同行の確認ポイント
意識するポイントを整理していきます。
主役は新人・若手の営業
新人・若手営業の成長(育成)というテーマがありますので、当然ながら主役は新人・若手営業というスタンスで同行しましょう。あらかじめお互いが認識合わせをしておくのが良いです。
今日、基本的に私からはしゃべらないからメインスピーカーは木下くんお願いね!
承知しました!!(緊張するなぁー)
準備どおりやれば大丈夫だよ。何かあればちゃんとフォローするから!
上司や先輩はサポート役に徹し、ギリギリまで手出し口出ししないようにしましょう。結構ヒヤヒヤ、ドキドキすることもありますがここは忍耐です。
部下はありのままを、上司はメモ役
実際の訪問の時は、部下はいつも訪問しているとおりにありのままでいきましょう。
上司や先輩は、議事メモついでに部下のGoodポイント、Badポイントをメモします。サポート役でありメモ役です。
そのメモは、訪問後のラップアップで活用します。何件か訪問して終わると疲れて忘れてしまいますのでメモをしておくことをおすすめします。
上司や先輩が確認する観点は?
既成の教科書を覚えるのではなく、生きた指導ができるのが同行のメリットです。
社会人として備わっているべき基本行動は当然ですが、それ以外は上司、先輩それぞれの感じるままに伝えてあげるのが良いでしょう。
とは言っても、新人や若手が自分だけでは気づきづらいギャップに関しては、指摘してあげることで大きく成長が見れます。その観点でいくつかピックアップしてみます。
表現の仕方や言い回し
個人によって大きく差が出るところかと思いますが、売れている営業であれば感じるような違和感があれば訂正してあげます。
お客様の依頼事項に対して「できない、できない」と応対していれば「まずはYesといって聞いたり、こういうやり方なら実現できますよと逆提案する方が良いよ」とか。
お客様に対して失礼な言い回しがあれば、それは他のお客様先でも使っている可能性があります。
知識や情報の精度
お客様への説明や質問の回答などで、もし事実と誤ったことを言っているのであれば、持ち帰らずにその場で訂正しましょう。
また情報の深さについても、お客様の求めているレベルに達した答えが出来ていないようであれば即座に補足説明が必要です。
交渉や駆け引きやトークのボーダーライン
経験の浅い営業は自分で判断した経験も少ないので、商談のクライマックスだとしても決め切るだけの知識や判断材料が揃っていません。また、普段のお客様との会話でもどこまで踏み込んで良いのかとか、打ち解けて会話して良いものかと、新人や若手の営業は答えを持ち合わせていません。
そのためにも、こういうクロージングの仕方アリなんだ?とか、値引きの価値を高める(お客様にこんなに値引いてくれるの?と思わせる)ためにこんな言い回しがあるんだ?とか、お客様がこのレベルの無理を言ってきたら断っていいんだなとか、まだ親しくないお客様ともこんなにフレンドリーに話て良いんだなというような、ボーダーラインを教えてあげる良い機会だと思います。
主役は新人や若手営業なので、やらせながら、「もっと突っ込んで話してよいよ」とか「限界まで駆け引きしちゃってよいよ」とボーダーラインを覚えさせるのが良いでしょう。
また、何回かに一度は、上司や先輩が見せて、その雰囲気やトーンを伝えてあげるのも効果的です。
お客様の意図が理解できているか
知識量、情報量や経験値が少ない場合、お客様との会話がかみ合わないケースがあります。また、お客様はダイレクトに物事を言うだけでなく、時には回りくどく表現をしたり、お客様が発言しなくても話の流れで営業が察しなければいけないことは良くありますし、それがお客様からの大事な示唆だったりすることもあります。
例えば大きな声では言えないけど、案件を進めるうえで大事なキーワードやヒントをほのめかしたり、独り言と称してつぶやいてくれたり、営業が「これこれこういうことですよね?」という問いかけに「うん」とだけ頷いてくれたり。
もし同行の際に、「こいつわかってないな」というシーンが見受けられた場合は、「あの時のお客様が言っていた意味理解できてる?」と聞いて答え合わせをしてあげましょう。本質が理解できていることが大事ですよね。
その場で確認できない場合に備えて上司、先輩はメモをしておくのが良いです。
同行後のおさらい
同行による訪問が一通り終わったら、最後におさらいをして営業同行が完了です。
前述のとおり、営業活動は、まず計画があって、その計画に対してどうだったのか(計画通りだったのか、そうじゃないのか)を評価するのが大事です。
まずは営業の主観で、一件一件の計画と結果について振り返りをさせ、そのあとに振り返り内容を上司・先輩がレビューします。
- 計画時のゴールは何だったのか?
- 訪問の結果、ゴールが達成できたのか?
- できなかったとしたら何が不足していたのか?
- 不足していたものをどう補うのかのネクストアクション
また、訪問時にメモをしていた指摘ポイントがあれば、それについても新人・若手営業と共有します。
これで、計画と結果の分析、営業同行時のリアルタイム指導ができ、一連の営業同行が実施できますが、期間をおいて定期的に実施することで、成長度合いが測ることができより効果があります。
まとめ
私が新人だったころに同行をしてくれた上司や先輩には感謝をしております!(大前提)
しかしながら真面目に思い起こすと、私がやってもらっていた営業同行は、お祭りごとのようであり、体育会系のノリで始まりそのノリで終わってしまっていたと感じます。偉そうですが。
- 計画はほぼほぼ無し
- 新人や若手が主役ではなく、同行した上司や先輩のオンステージ(当の私も任せきり)
- 同行が終わると成果発表だけして振り返りは無し、打ち上げに直行
こんな感じでした。
それでもある程度成果が出ていましたし、おかげ様で私も今まで営業としてやってくることができましたので、過去同行していただいた効果はあったものと思いますが、もっと計画と結果の評価がしっかりと出来ていればより効果が出たと推測できますし、他の営業についても一人ひとりの成長度合いが変わっていたのではないかと思いながら、私は普段部下と同行をしています。
是非、効果的な営業同行をして、個々人の営業スキルアップと、組織の底上げをしていきましょう。