ROIは、企業が経営していくうえで非常に重要な指標になっています。
企業が成長するためには投資が必要ですが、その投資が妥当かどうか、投資に対して想定通りの収益が得られるかどうか、経営陣は常日頃から考えて判断材料としています。
そこを理解していれば当然のこと、営業の提案には常にROIを踏まえたエッセンスが盛り込まれている必要があります。
「私たちの提案は投資に対してメリットがありますよ」ということを示せることは、案件の大きな決定材料になりますし、他社との競合状態であっても、よりROIの出る提案が出来れば採用に繋がりやすいと言えるでしょう。
提案書にROIはマストということがわかりましたので、この記事はもう少し具体化し、どう提案書に盛り込んでいけば良いかを説明していきます。
この記事はこんな人におすすめ
- ROIってなに?
- どうして大事なの?
- ROIを理解して決裁稟議がスムーズに進む提案書を作りたい。
なお、提案書の作り方に関してはこの記事でも解説していますので参考にしてください。
ROIとは?
ROIとはReturn On Investmentの略です。
意味としては、投資に対して、どれくらいの利益が得られたかを計る指標になります。
計算式に当てはめてみて、その数値=ROIが高ければ高いほど得られた利益が大きいということになり、また、ROIが低ければ低いほど投資して実施した施策の効果が無かった、もしくは期待より効果が低かったということになるわけです。
経営者や会社の経営陣が、何か会社のお金を使って投資(事業や設備、人材等)しようと思ったときは、常にこのROI、つまり投資した分の効果がどれくらいあるだろうという目線で考えているため、何かを買ってもらう立場にある営業にとっても、お客様の立場になってROIにフォーカスすることは非常に大事なアプローチと言えます。
ROIの目的は?
経営者や会社の経営陣がROIを意識する目的は、投資に対してどれだけリターンが見込めるのか経営判断をするためです。
ROIを算出することで、この投資は有効か、はたまた無駄な投資になってしまうのか。そういった判断をするための基準として使われます。
ROIが高ければ、更なる投資(事業拡大とか設備の追加や増員等)を判断することもあるでしょう。一方で、ROIによって不採算と分かれば撤退するという賢明な判断をするのにも役立ちます。
ROIってどう算出する?
ROIは下記の簡単な計算式によって算出されます。
利益の算出の仕方は、「売上-原価=利益」ですね。
利益を投資額で割ります。
投資額よりも利益のほうが大きければ、ROIは100(%)を上回り、それは利益の確保できる良い投資だと判断がつけられます。
反対に、投資額よりも利益のほうが小さければ、ROIは100(%)を下回り、赤字が出てしまう可能性を示しています。
ROIの参考例
参考例1
1,000万円の事業投資をし、結果的に2,000万円の利益を得られた。
式に当てはめると、
2,000÷1,000×100(%)=200(%)
ROIは200%となります。
この例では、投資額に対して倍の利益が得られ、事業としては堅調であることが想像されます。
更なる増資をするのか、維持するのか、200%では低いと判断するのかは、業種や業界、それぞれの会社ごとの経営判断が必要です。
参考例2
500万円の事業投資をし、結果的に550万円の利益を得られた。
式に当てはめると、
550÷500×100(%)=110(%)
ROIは110%となります。
例1の200%に対して1.1倍の利益が得られた事業ということになります。
こちらも、会社ごとの経営判断が必要になってきますが、もしかすると増資をしてまで拡大するべき事業ではないと想定されます。
継続するという判断においては、更に先の将来に大きなリターンが見込まれるポテンシャルのある領域だということが分かっていたり、今後、投資額(コスト)が削減できる見通しが立っていてROIの改善が見込まれる場合などの条件を揃える必要が出てきます。
そういった改善のヒントを得るための指標として有用なのがROIです。
ROIを理解したら提案書に取り入れる
実際ありそうな例を簡略化したものをもとに説明します。下の表は1か月ごとの収支と年単位の収支をまとめたものです。
ケースとしては、「老朽化したシステムの入れ替えを検討しているお客様への新システム提案をする」ということにしたいと思います。
イメージをしながら、まずは下記を表をご参照ください。
今回のケースは、初期投資額だけではなくて付随して掛かってくるランニング費用や人件費などの諸経費も含めて考えてみます。
まず、上段のグリーンの表は、現状の収支を示しています。
ランニング費用や人件費等の出ていくお金と売上の差し引きでどれくらい儲かっているかがわかります。この例で言うと、年間600万円の利益が出ているのがわかります。
そして下段のオレンジの表は導入以降のシミュレーションです。
導入するタイミングで初期費用2,000万円の出費が発生してますが、人件費は50万円に減額され、5か月目以降少しずつ売り上げが増えていくことがわかります。
初年度は、初期投資のために大きな出費が発生し、単年では利益がマイナスとなりますが、2年目以降挽回し、3年目で黒字に持ち直していることがわかります。
それではROIの観点で、今回の例の3年累計を整理してみます。
投資(諸経費込み)計=7,400万円 (‐3,800+‐1,800+‐1,800=‐7,400)
利益=7,900万円 (1,900+3,000+3,000=7,900)
式:7,900÷7,400×100(%)=106%
3年目までを累計してROIを算出しましたが、4年目、5年目と継続して利益が見込まれ、更なるROIの改善も想定されます。
提案のシナリオとして想定されるのは、初年度大きな投資をするが、人件費の削減と売上拡大により利益の増加が見込まれる。よって初期投資によるメリットが大きいですよ。という流れです。
ここまでで説明したように、投資に対して将来どういったリターンが見込まれるか?リターンの中には売上が増えるものや、コスト削減につながるものなど多様です。それらを整理して提案書に盛り込めばお客様の決裁稟議にとっても非常に有益な情報になるでしょう。
またリターンが大きければ大きいほど、お客様の投資額の許容範囲も広がると考えられるため、攻めの姿勢で大きな金額での提案が出来る可能性も広がると考えられるでしょう。上の例で言えば2,000万円よりも高い金額の提案が出来るかも知れないということになります。
一方で、お客様の期待するROIに達していなければ、提案額(初期投資額)を下げたり、ランニング費用を下げる再提案をしなければいけないかも知れません。上の例で言えば2,000万円よい低い提案をするか、ランニング費用を更に減額しなければいけないかも知れません。
お客様ごとにROIの目安が異なることは前述のとおりです。
今回の例で挙げたようなシンプルなケースは少ないかも知れませんので、実際に提案する際には盛り込むべき項目をよく洗い出して実態を整理したうえで、説得力のある数値を示すようにしましょう。
お客様が、提案を採用するに値するROIの適正値(目安)を、入念にヒアリングしてから提案することが大事です。
まとめ
会社の目的は利益を出すことです。そしてその利益を増やすことが継続的なミッションで、そのためには投資を増やして事業規模を拡大する必要も出てきます。
その中で重要となってくるROIの考え方は理解できましたでしょうか。
お客様が稟議決裁をグングン進めるために、営業がそれに見合った提案をしない手はありません。
ROIについて理解を深めるとともに、営業としては、普段からどうROIを出すかについてシナリオを検討しながら営業活動をするのが良いでしょう。意外にも妙案が浮かぶこともあると思います。