お客様との面談、商談をスムーズに進めるためにどんな工夫をしていますか?
事前に用意したスクリプトを読み上げるようなトークでは不自然な感じがして、そのうえ相手の反応が微妙だったりすると自分のトークがあんまり心に響いてないな、なんて不安になるときありますよね。
この記事はこんな人におすすめ
- 上手い営業トークを知りたい
- 言いにくいこともすんなり言えるトークを知りたい
- 効きにくいこともすんなり聞ける聞き方を知りたい
- 上手いトークによって商談を優位に進めるたい
この記事では、営業トークや営業ヒアリングのシーンをスムーズに進めるためのテクニックとして営業がよく使う効果的な営業枕詞について説明していきたいと思います。
回りくどい、と感じるかも知れませんが、相手の立場を重んじながら進めたい商談においては思った以上に効果的な方法ですし、また特に慎重に商談を進めたいと思っている営業の人にとっては、自分の営業行為を正当化する心理的な免罪符になるため、誠実に営業をしている人にとっては効果的なものだと思っています。
すぐに使えるものになっていますので、是非現場で実践してみてください。
応用編に関する記事はこちらをご参照ください。
枕詞ってなに?
そもそも枕詞ってなに?から説明しましょう。
枕詞は「まくらことば」と読みますね。
中学生頃に国語の授業で習ったことを覚えている人も多いと思いますが、一般的には和歌で用いる修飾語として知られていると思います。「たらちねの」ときたら「母」が来るというやつです。
そしてもう一つは、何かを伝える際にワンクッションの役目を持った言葉です。例えば言いにくいことを唐突に伝えれば時には角が立つことも、この枕詞を挟むことで、柔らかく伝えることができる、というものです。
この記事では後者にあたるビジネスシーンで使える営業的枕詞について解説していきます。
営業は、現場でお客様から言われたことだけをメモっているだけでは十分な情報は集まりませんよね。お客様も聞かれたこと以上は言わないことが多いです。
ですから営業は聞き出すことや、お客様により多くを喋ってもらう必要があります。
例え雰囲気的に聞きにくい状況であっても、まずは営業の方から一言切り出し、そしてお客様に発言してもらう時間を数多く作らないといけないですよね。
雰囲気づくりや空気づくり、相手に与える安心感みたいなものは営業側が作り出さないといけないということです。
それでは、そのための具体的な方法を次の説明で覚えていきましょう。
営業的枕詞<基本編>
まずはどんなシーンでも使いやすい基本編を取り上げます。
恐れ入りますが
基本中の基本の言葉です。
例えば言いづらいことを言うときに「恐れ入りますが」とか「大変恐れ入りますが」「恐縮ですが」と前置きすることで、一段下がって少し柔らかい印象を与えることができ、伝えたいことを伝えやすくなるでしょう。
お客様に対し唐突に目的だけ伝えるようだと、お客様からすれば配慮が感じられなかったり、敬われていないという印象を持たれてしまうかもしれません。
基本のキの字ではありますが、いろいろな場面で使える便利ワードでもありますので、是非意識して使ってみましょう。
お手数をおかけしますが
お願いごとをしたり、実際に相手の手を煩わせる場合に前置きする言葉です。
唐突に「お願いします」とやってほしいことだけをお願いすれば、尖った印象を与えてしまいますが、「お手数をおかけしますが・・・お願いします。」と一言添えるだけで申し訳ないという気持ちが伝わると思います。
相手はそこまで言われたら仕方ないなぁという思いになってくれると思います。
お願いしたことに対して適切にやってもらいたい場合などに、断られないための一言として非常に効果の大きいマジックワードだと覚えておいてください。
3分だけ宜しいですか?
相手側が忙しいことを知っていたり、相手側が慌てて何かを早めに切り上げたい様子を見ていると、長々と時間をもらうのは気が引けますし、配慮に欠けるのではと遠慮がちになってしまうことがあると思います。
でもそこに遠慮があると営業としての仕事が進みませんから、意を決してお客様にコンタクトしなければいけませんよね。
なかなか遠慮の気持ちが大きいと一歩踏み出すことに躊躇してしまうことや、実際に相手側が忙しい場合、遠慮のない人だなぁというマイナスの印象を与えてしまうこともあるかも知れませんが、そんな遠慮や躊躇を打ち消す言葉になります。
そんな状況で有効な枕詞としては、以下の通りです。
「3分だけ宜しいですか?」「5分だけ宜しいですか?」と前置きしてみましょう。
忙しいというのは重々承知しているのですが、、、という気持ちを出しながら聞くのがポイントです。
3分だけ宜しいですか?と前置きをしたら、その流れで本来ヒアリングしたかったことを聞けばOKです。
もしそのまま話が盛り上がれば、3分以上、時間が許すだけ会話をさせてもらうことが出来るかもしれません。
そんなときも、「3分と言いながらたくさんお時間をいただいてしまいました。すみません。」と言えば相手も悪い気はしないでしょう。
1つだけ聞いて良いですか?
3分だけ宜しいですか?と同じ要領ですね。
(聞きたいことは山ほどある、でもあなたがお忙しいことも十分わかる、なのでせめて…)
1つだけ聞かせてもらえませんか?
(はいはい、一つくらいなら時間もとれるし大丈夫。何よりこちらへの配慮が感じられるから悪い気はしないな…)どうしたんですか?少しくらいなら時間取れますよ。
空気を読まずにこちらの都合で話しかけたり質問を投げかけたりするよりも、上記の例のように「お忙しいと思うので1つだけ伺っても良いですか?」という言葉をひとつ挟むだけで、聞き手の印象はだいぶ良くなるでしょう。
実際に核心を突く内容であったり、お客様の関心事に対する質問が投げかけられれば、1つだけとは言わず多めの時間を確保してくれることもあるでしょう。
やはりここでも大事なのが、相手への配慮が見える形で言葉にするということになります。
話をしながら思いついてしまったのですが
色々な枕詞を駆使して、お客様との会話が弾んできたときに、もう少し突っ込んで聞いてみたいなと思っても、「まだ早いかな?」「もう少し様子を見てからにしようか」なんて想いが頭を駆け巡る時がありますよね。
そんな時は「話をしながら思いついてしまったのですが」と前置きをしてみましょう。
ヒアリングしたくて用意していた質問事項を一通り聞いたとしても、会話の流れ次第では用意してきた内容以上に深堀りをしたいと思うことは良くあります。
いろいろと話を掘り下げていくことは営業として大事な仕事だから仕方ないですよね。
でも実際は、まだ相手との距離があったりすれば躊躇してしまうこともあるでしょう。
そんな時に効果を発揮するのがこの言葉ですね。
散々お時間をいただいたところで恐縮ですが、今お話を伺っている中でもう少し伺いたいことが出てきてしまったんですが、、、
はい、なんでしょう
(行きがかり上しかたないな)
みたいな感じで、文脈上、違和感のない形でアレンジしてみてくださいね。もちろん相手が嫌がらずに会話が気持ちよく続くのであれば、遠慮なく踏み込んだ質問をしていきましょう。
不勉強なので教えてほしいのですが
誰を相手にしても使って不都合のない言葉ですが、私の経験上、相手が年配の方や、自尊心の強い方であれば、この少しへりくだった一言が特に効果的でしょう。
また相手の悩みに親身になって相談に乗ってくれるタイプの方も、この枕詞を使うことでより一層丁寧に話を聞いてくれると思います。
私のお客様でも知識や経験が豊富で、有識者を前にしても引き下がらず論破したがるようなタイプの人がいます。
相手がそのようなタイプの人であれば、「こちらが知識不足で申し訳ないのですが教えてもらえませんか?」と言うことで、かえってたくさん教えてくれます。
これによって私は、お客様からは毎度最低限聞きたいと思っていた以上のことを教えてもらっています。
元来、お客様は人間であり、人間は親切な生き物です。
ですから、こちらが謙虚で誠実な姿勢を姿勢を見せれば、それに対して横柄な態度で返してくるのはまれなケースです。
営業が変なプライドを持って、大事な枕詞を忘れてしまうと、こじれて目的が果たせないことになってしまいますから、是非虚勢を張らずに少しへりくだることを意識してみてください。
若干腹黒いですが、わからないフリをして意図的にこの枕詞を使うのも良いですね。
この場合相手を貶める嘘ではないということがポイントになるかと思います。
思いつきなんですが、例えば…
商談が進んでいくと、相手の意向を確認したい場面が多くなります。
他社競合している場合などは特にお客様がどう受け止めているのか、どちらの方向に進めようとしているのか、どんな条件が最後の決め手になるか等々、本音を聞き出したいという場面があると思います。
例えば、この商談を決定づけたいと思って進めているとしたら、出来るだけお客様のストライクゾーンにボールを放ってニーズに対して的確な提案をしつつも、会社としては最大の利益を確保していきたいはずです。
一方のお客様も、営業と交渉をしている当事者で、営業から極力良い条件を導きたいと思っているはずですから、そうなると簡単には腹の内を見せてくれないというのも良くある話です。
そういった状況で、この「思いつきなんですが、例えば…」といった枕詞はとても効果的な言い回しになります。
ストライクゾーンを探るためにあたりをつけるための枕詞ですね。
例えば、他社と競合している案件で決め手が見いだせないとき・・・
この度はご提案ありがとうございました。
持ち帰って社内で検討しますね。
引き続き宜しくお願いします。
こちらこそありがとうございました。
今回は貴社でお困りの点を解消できる提案をお持ち出来たと考えています。
ご検討の結果、弊社の案をご採用頂けそうでしょうか。
うーん、そうですね。
提案の内容は良いと感じましたが、他社さんの案ともう一度比較して関係者とも相談の上で決めますね。
(決め手に欠けている様子だなぁ)
お客様、あくまでも私の思いつきで、まだ社内の誰にもまだ了解を取っていないのですが、例えば〇〇して□□することで△△といったことが条件として提示出来たら採用の後押しになりますかね??
そういうこともできるんですか?それであれば確かに当社のメリットも大きいので上司を説得しやすくなりますね。
上記の流れでご理解いただけるかと思いますが、これはテストクローズの一種ですよね。
入札時などは一斉に条件提示をして機械的に決してしまうことがありますが、それ以外の通常商談時においては事前に探りを入れて最適な落としどころ見つけるのが、案件の利益を最大化するためには大事なポイントです。
「あくまでも思いつきなのですが」と前置きしているので、もし上司に相談して承認されなかったらゴメンナサイとあとから撤回することも出来ますし、競合状態が拮抗していれば最後に商談を勝ち取るための決め手を聞き出すということにもなります。
個人的なご意見を聞かせてもらえますか?
商談の相手が決裁者ではなく担当者であれば、その担当者を介して正しい判断材料を得る必要あります。
でも、一般的な会社員であれば責任が伴いますから、安易に判断をすることに尻込みしてしまうのが当然ですよね。実際問題、担当者に判断する権限がないことも一般的です。
その相手に責任ある発言を求めてしまうと心のシャッターを閉めて聞きたいことに答えてくれない可能性もありますので、「あくまでも聞きたいのはあなたの個人的な意見ですよー」とハードルを下げてあげるのが、この枕詞であり、非常に効果的なやり方です。
自社の提案がイケてるのか否か、競合他社対比で優位なのか否か、どうすれば当社案を採用してもらえるのか、担当として断言してほしいとか、最終結論を求めるのではなく、あくまで個人の意見や感想として聞いてみましょう。
少し話はそれますが、お客様との会食、懇親会の目的は、こういった個人的な意見を聞くことにありますよね。
また「ここだけの話にしますので」「オフレコで」というのは良く使いそうで効果はありますが、公式には言わないだけで担当者自身が発言することには変わりないところから、若干心のハードルが下がりきらないと考えられます。
いずれにしても、その場面までに関係性を作っておくことが大事です。
アドバイスをお願いします
前述の「不勉強で・・・」や「個人的なご意見を」に近いアプローチの仕方です。
例えば自分の提案内容が、100点中何点なのか?合格点に満たないのであれば何が足りないのか?どうすれば満点に近づくのか?率直にアドバイスを求めてしまうというやり方です。
経験を踏まえると、多くの人は教えを請われると大抵は素直に教えてくれます。
大事なことは明確にお願いすることです。
誰かに教える、誰かの優位に立つというのは自分を居心地の良い位置に置くことになりますので、あえてアドバイスを求めてみるというのは非常に効果がありますね。
同時に、責任の伴う発言ではなく、個人的な意見としてアドバイスを求めるのであれば、心理的なハードルも下がり、聞きたいことを発言してくれるでしょう。
注意点
営業的枕詞使用上の注意です。
- 回りくどくならないように気を付ける
前置きを続けざまに使うと回りくどくなって何が言いたいのか伝わりにくくなります。
最低限の配慮をして、目的は明確に相手に伝えましょう。 - 言い訳じみた言い方にならないように気を付ける
前置きが続くと言い訳に聞こえてしまう場合がありますのでシンプルにいきましょう。上記同様に、単刀直入に伝えたほうが良いケースもあります。 - オンライン会議での使用は見極める
オンライン会議でも相手の感情を読み取りながら進めることは大事です。オンライン会議の場合は伝えたいことを、箇条書きなどにして端的に伝えることの方が効果的な場合がありますので状況を見極めて使用可否を判断してください。
一方で、1対1の電話での会話のときには効果を発揮しますので使えることが多いと思います。
まとめ
基本編のこの記事では、上手い営業トークのやり方を説明しました。
これを覚えれば、上手いトークで言い出しにくいことを言う、上手いヒアリングで聞きにくいことを聞くということが実現できるはずです。
Amazonなどオンラインショッピングでは、購買意欲の高いお客様がサイトに訪れ、高い確率で購入に至ります。
ですが私たちが置かれている営業シーンは、「要らない」「間に合ってる」「他社で検討している」といった自動成立で商談が成立しえない現場であり、営業行為が必要不可欠な現場です。
営業の真価が問われる一つとして営業トークがありますが、是非この営業枕詞を駆使して現場を切り拓いていただければと思います。
是非次のステップとして上級編もご参照ください。